MLBの現在地

 日本野球機構の統計データによると、プロ野球の来場者数は2013年から増加傾向にあるそうだ。2012年秋のドラフトで日本ハムファイターズからドラフト1位指名され、2013年シーズンから二刀流でデビューした現在大リーグのロサンゼルス・エンゼルス大谷翔平選手も、プロ野球人気、上記の来場者数に少なからず貢献しているだろう。

 

 野球の本場、アメリカはどうだろう。アメリカには4大スポーツといわれる①MLB(野球)、②NFLアメリカンフットボール)、③NBA(バスケットボール)、④NHL(アイスホッケー)がある。MLBは4大スポーツの中でも最も歴史が古く、1876年に創立され140年以上の歴史を誇る。かつては国民の娯楽と言われ一番の人気だった。しかし、現在は立場が逆転しているようだ。

 

 4大スポーツの中で一番アメリカ人の心をつかんでいるのはNFLアメリカンフットボール)だろう。大柄な選手同士の力と力のぶつかりあい、相手選手の間をくぐりぬける俊敏性だけでなく、膨大なデータから生まれる頭脳戦、アメリカ人ならずとも人々がアメリカンフットボールに熱中する理由はいくらでもある。


 アメリカ最大の都市ニューヨークを拠点とする2つのチームで野球とアメリカンフットボールの人気を比べてみよう:NFLジャイアンツとMLBヤンキースだ。ジャイアンツの本拠地MetLife Stadiumの収容人数は82,500人に対し、2017年の平均来場者数は約78,000人で、動員率は94%にも及ぶ。一方、ヤンキースはどうかと見てみると、本拠地Yankee Stadiumの収容人数54,251人に対し、2017年の平均来場者数は40,000人、動員率は73.4%に過ぎない。レギュラーシーズンの試合数は、MLBNFLの約10倍もあるため、動員だけで単純に比較することは難しい。試合数が少ないNFLジャイアンツの試合により多くの人が集まるのは当然ともいえるからだ。

 

 しかし、ヤンキースファンだけでなく全MLBファンにとって心配なことは、2010年から2017年で、Yankee Stadiumへの来場者数が約15%も減っていることだ。2017年のヤンキースがだらしなかったかファンが離れていったのか?それは違う。MLBファンには記憶に新しいだろうが、2017年のヤンキースは、田中将大投手や、新人にも関わらずMVP級の活躍をしたアーロン・ジャッジ野手をはじめ若くて有望な選手を数多く擁し、アメリカンリーグ東地区2位でシーズンを終え、ワイルドカードでプレイオフへ進出。その年のワールドチャンピオンとなったヒューストン・アストロズに惜しくも敗れたもののリーグチャンピオンシップにまで駒を進めていたにも関わらずだ。因みに2017年の来場数は、東地区3位に終わった2013年の約40,000人よりも少ないのだ。

 

 MLBNFLとの比較で、更に顕著な数字をご紹介したい。MLBNFLともに、ワールドチャンピオンを決める試合(シリーズ)がある。NFLのSuper Bowl、MLBのWorld Seriesだ。Super Bowlは1試合のみの一発勝負であるのに対しWorld Seriesは4勝先取のため最短で4試合、長くなれば7試合目で決着が着く。2017年シーズンのそれぞれのTV視聴率を見てみると、World Seriesは平均視聴率が約11%であるのに対し、Super Bowlは驚きの約43%で実に1億人以上のアメリカ人がテレビ観戦していたことになる。

 

 野球の本場アメリカで、NFLの人気(ここではご紹介しないが、バスケットボールのプロリーグ・NBAの人気も近年上昇中だ)がMLBを圧倒しつつあるというのは、野球ファンとしては少し寂しい思いがする。

 

(本記事は2部構成にします。近日中に後半をアップします。)